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​活動レポート

関西支部(J-CLIL KANSAI) 第7回勉強会

J-CLIL 関西支部では、5月 13 日(土)に対面形式で大阪成蹊大学相川キャンパスを会場として、ワークショップや実践的な発表を中心とする勉強会を開催しました。関西地方各府県や福岡などから計34名の参加があり、小学校から大学までの各校種の先生方、私塾の先生方、大学院で学ぶ方々など多様な方々にご参加いただき熱気溢れる勉強会となりました。


▶J-CLIL関西、工藤泰三(名古屋学院大学)から、オープニングトークがありました。多様な研究会が対面で実施されるようになった中、J-CLILに参加いただいたことへの御礼に加え、CLILに取り組んでいると、日々の社会の出来事、地震や災害、世界のニュースに自然と関心を持つようになり、それが生徒・学生だけでなく教師にとっても学びとなり、それが教師としてのやりがいやモチベーションに繋がるという話がありました。


▶メイン・ワークショップ「Templish-お寺の持つ可能性と身の回りに溢れるTeaching Tips」

符樫本英之准教授(大阪成蹊大学短期大学部)は、企業でのテクノロジー開発、グローバルプロジェクトのご経験、大阪府スーパーイングリッシュティーチャー等の経験を集結され、そのリズムある英語トークで、「Templish✖CLIL」のワークショップをしていただきました。まず、奈良県生駒市にある長弓寺で、地域の小学生に英語を通したお寺の文化に親しむ、寺子屋イングリッシュの様子を紹介くださいました。お寺の竹を何メートルにも繋げた流しそうめんを英語を用いながら楽しんだり、茶の湯の作法を自作のイラストで表現しながら子どもたちが英語で親しんだりする様子を聞いて、会場一同、日々の日本の生活を見直し教材化することの価値を感じました。また、英語表現や文型を、お寺の「障子」の碁盤の目にカードを挟み込んで示すなど、お寺の財産を活かした温かい指導も紹介されました。その後のグループワークでは、会場の参加者が4人1組になって「和文化」を題材にした指導案作りをしました。【和文化を選ぶ⇒指導ゴールの設置⇒アイデアの共有⇒実際に子どもができるようにダウンサイズ化した語彙や表現へ】と手順が示されました。会場からは「水墨画の濃淡」「エンドウ豆の収穫」「肝だめし」など、わくわくする企画アイデアが出されました。



発表資料


セッション1 

「小学校英語授業に位置づけた活動―CLIL実践ワークショップ」

ウォルフ佳代子教諭(四天王寺小学校)の実践発表では、小学校英語専科として7年間CLILに取り組まれてきたご経験から、①サイエンス(酢、ケチャップ、コーラなどの種類別のコップに、コインを入れてコインをきれいにするマジックサイエンス)の導入、②CLILドラマ作り、③動物のすみかと食べ物(協働的な学びの中で、文字をつかった表現にも取り組む)などの紹介をいただきました。CLILへの取組の中で、英語そのものが得意な子どもと、理科や社会など教科内容が得意な子どもの、両方の子どもが自己肯定感を高める様子が伺われました。

「中学校英語とCLIL型授業の試み」

鈴木優子教諭(高槻中学校・高等学校)は、SSHで3年前よりケンブリッジ大学出版とBetter Learning Partnershipを結び、CLIL的な英語指導の取組を工夫されており、本発表ではその中から「Unit1-Animals」の単元を使った実演していただきました。中学校3年生対象の設定で、①動物の生態やすみかについてのTeacher Talk、②動物についての英語質問を変えていき、「どのように餌を食べるのか」という高次の思考が必要なやりとりへと発展、③テキスト本文について、音声を中心としながら内容理解、④テキスト動画を使って、イルカ(Dolphin)と鳥の共存について思考を促し、その流れからパラグラフを意識したWriting活動へと導かれていました。現在では、パフォーマンス評価や入試問題についてもパフォーマンス課題が取り入れられており、着実に力をつける中学生の様子が伺われました。


発表資料


▶セッション2

「高校におけるCLIL型授業の試み」

嶋田拓哉教諭(千葉県立松戸国際高校)のご発表は、CLILの4Csのうち、とくにCommunicationとCultureに焦点を当てながら、ご自身の日頃の授業実践をCLILの枠組みで捉えなおすものでした。目標設定とそこへ向かうプロセスについて考える単元では、Focus on Formのアプローチを重視し、ワークシートを活用しながら生徒の言語への関心を高め、そこで得られた気づきを言語活動(スピーチ)に生かす実践を紹介してくださいました。また、文化間コミュニケーションの単元では、Cutshall(2012)が示す文化の3要素(Perspectives, Practices, Products)を踏まえたのち、ステレオタイプにも留意しながら異なる文化におけるアイコンタクトの仕方の違いについて考察する授業について語っていただきました。嶋田先生ご自身ではCognitionについては言及されませんでしたが、生徒たちがCognitionを総動員しながら授業に参加している様子が容易に目に浮かぶご発表でした。

発表資料



「工学系学生(生徒)を対象としたCLILの観点を盛り込んだタスクの開発」

谷野圭亮講師(大阪公立大学高専)は、ご自身が執筆に携わった「CLILで学ぶ工学と社会」(南雲堂)の内容や各ユニットの構成と、その作成の基盤となった考え方についてお話しいただいた後、ChatGPTをはじめとする各種の大規模言語モデルについての説明と比較、そしてそれらの有効な活用方法について発表していただきました。CLIL実践との関連においては、Open AIを使用した先生自作の指導案作成ツールやプロンプト作成ツールをご紹介いただくとともに、高等教育におけるCLILの実践においては、大規模言語モデルがどのようなものかを理解したうえでうまく活用することができれば、大規模言語モデルは実践者の大きな味方になるということを示唆していただきました。


発表資料


▶CLIL-ITE ベトナム(ハノイ)CLIL教育交流インターナショナルセミナー Video Clip報告

伊藤由紀子准教授(大阪成蹊大学) 柏木賀津子教授(四天王寺大学)


2023年3月に、CLIL-ITEによるベトナムCLIL教員研修が実施され、参加した2人によるビデオ報告が行われました。日本語教育熱が大変高いベトナムにおいて、良い日本語教師を要請することが重要となっています。しかし、従来の注入式授業から、CLIL型のアクティブラーニングに拠る日本語指導へ変換は容易ではなく、CLIL教師養成研修が望まれています。そのような中、ベトナム日越大学、神村初美教授の誘いで、笹島茂CLIL-ITE会長 池田真J-CLIL会長(上智大学)、メンバーらが、ベトナム日越大学で研修ワークショップを開催し、ハノイ市内の50名近い大学教員らが参加されました。日越大学の神村初美教授の日本語教育についての講演の紹介、また、伊藤由紀子先生による「和そうそく」(ハノイ工業大学)、柏木賀津子先生による「俳句 to the World」(日越大学)の映像を見てもらいました。また、日越大学の学生の日本語プレゼン、フェニカスクール、日本語国際学校などの授業の様子を見てもらいました。日本におけるCLIL実践が広まりつつありますが、その内容をアジア各国での研修に生かせる可能性が見いだせたセミナーでした。





文責:柏木賀津子(四天王寺大学)・工藤泰三(名古屋学院大学)

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